J社駐在員の時は、もっとたくさん売ることやもっと生産効率を上げることを追求していましたが、それは、先達が会社としての骨格を作り、拡販や増産を行う素地を作ってくれていたからできたのだと気づきました
自分はなんて恵まれた環境で仕事をしていたか、痛いほど思い知りました
しかし、良い環境がなければ作るしかありません 半年かけて各位へのヒアリングを行い、DBA (Do Business As) の統合効果の発現に向かってPMIを開始しました
この頃、早起きして弁当作りを始めました サラメシに2度紹介された拙作の弁当 今月退職とともに終えましたが、13年間続けた弁当作りとなりました
2011-2013 ガバナンス導入期
Bylaws(会社定款)がない?!
着任後、最初にN社アメリカ現法のBylawsを確認しようとしましたが、どこに保管されているかわかりませんでした N社アメリカ現法の総務担当に聞いても、自分たちは毎月の月報を東京に報告してるだけだからという回答 CaliforniaのDBAに聞きましたが、それはN社の仕事でしょ!と言われました
なんという低レベルの管理体制 Bylawsがどこにあるかわからないとは?! 呆れるばかりでした!
当時付き合いのあった弁護士事務所に連絡し、やっとBylawsのコピーを見つけましたが、1986年のアメリカ現法設立以来内容の見直しがされておらず、急ぎ改訂版を作成しました
規程類の導入、会社方針の掲示CA
すべてに属人的なManagementが行われていましたので、子会社稟議規程や職務権限規程が導入し、履行するように要請しました Manager以上の社員の昇進や給与についての権限や新製品発売の権限をDBA長からN社現法社長に変えたのは両DBA長とも不満げでしたが、したがってもらいました
また、N社の理念や考え方を示すものがありませんでしたので、N社の会社方針を示すHP上のスローガンを英訳しポスターにして、CaliforniaやIowaの主要なエリアの壁に貼りました
カリフォルニアの会議ではなんでそんなことをする必要があるのか?と人事部長に聞かれ、ドイツの企業であるBMWのアメリカディーラーにもBMWのスローガンがある 店内に「駆け抜ける喜び」みたいなものが貼ってあるでしょう あれと同じことですと答えると、わかったようなわからないような顔をしていました
給与レベル/ボーナスレベルの統合
将来の機能統合のために、種々の確認を行いましたが、CAとIAの給与レベルの違いやボーナスの有無は最も気を遣うテーマでした 外部から人事の専門家を入れて地域別職種別の業界賃金データを示しながら地域別に納得のいく給与レベルへの改訂を行いました
一方、ボーナスの有無については、有の方に合わせるしかなく、Iowaに2年かけてボーナス制度を導入しました ただ、人件費の急増を避けるため、Californiaのボーナスについて2年間微減状態とせざるを得ませんでした
ボーナス額は会社の経営状態次第での金額となるとしてありましたから、微減にすることに問題はありませんでしたが、やる気を削ぐことがないようにキーマンには別封を用意しました
DBAの資金統合
さらにDBAが有している銀行口座にある預金は、ペティキャッシュ等月次に必要な資金を除いて、N社アメリカ現法の口座に統合しました
両DBA長とも自治を取り上げるのかと不満げでしたが、BS上会社は一つであり、DBAでの個別の投資は慎むように要請しました
勘定科目の統合、会計監査会社の変更
CA/IAのDBAごとに勘定科目が異なっているのを、経理財務のプロであるファイナンシャルコントローラーを雇い、米国会計基準に合わせながら、N社基準にも対応できるものを作りあげ、勘定科目の統合を行いました
また、これまでIRSやN社監査室からの質問に、 経理社員がいない当社に代わりアメリカの会計会社が答えてくれていましたが、この会計会社は長年当社の会計監査も行っており、コンプライアンス的に危ないと判断しました
日本の本社の合意をいただき、長年の関係にあった会計会社との契約を一旦打ち切り、日本にも馴染みのあるD社への変更を実施しました
不適切な対応があったわけではありませんが、仕組み的に不安定であったことは否めず、一旦、白紙に戻す処置を取りました
2014-2016 機能統合準備期
本格的な機能統合を行う前に、まずは30年続いた市場でのCAとIAの骨肉の争いを止めさせる必要がありました
そのためには営業統合を行うことが必要だと合意してもらいましたが、そのための各種準備が必要になりました
VP制導入
CaliforniaとIowaでそれぞれがDBA長としてマネージしていたスキームを、N社アメリカ現法社長をトップにしてCA拠点とIA拠点を持つ組織に変更し、CA拠点にはCAのDBA長をSVPとして置き、IAではIAのDBA長にVPになってもらいました
両DBA長をVPにすることで体制面での一体化を目指しました
ISO9001の全社導入
CA工場のみがISO管理を行っていましたが、これを標準管理としてガバナンスの強化を図るべく、IA工場にもISOを導入し、全社をISO管理で繋げ、全体の品質管理責任をN社アメリカ現法の社長と両DBAのQAQC長とする体制に変更しました
ISO監査はロケーションごとに行われますが、監査をお願いする会社は同一のところとし、それぞれの監査結果を社長が確認するスキームとしました
当たり前と言えば当たり前の仕組みですが、ISO導入を行う過程で、日本人駐在員の技術部長がIA工場に行こうとすると、IAのQAQC長から「英語のわからない人間には来てもらいたくない」と言われたようでしょげてました アメリカで誰もが一度は受ける洗礼です^^
CIマニュアル統合
2年以上も前に、CAのDBAとIAのDBAが統合されN社アメリカ現法が存続会社となったのにCIマニュアルが存在しませんでした 会社の看板を設置するにもロゴの規定がなく、ロゴに使用する色番号さえありませんでした
急いで東京の本社にN社ロゴの色番号を教えてほしいと連絡すると、企画部門からは現地で目視による確認をしてほしいとの回答でした グローバルビジネス展開ができていないというのは、こういう細部の仕組みができていないということだと認識しました
最初はCIマニュアルの制作を行いましたが、営業統合前には、メールアドレスの統合を行いました 全社員のメールアドレスを、CAはiicsera.comから、IAはmidlandbio.comから、N社アメリカ現法として取得していたメールアドレスに変更しました
また、名刺の会社名もそれぞれのDBA名からN社アメリカ現法名に変更しましたし、従業員に支払う給与の小切手に印刷されている会社名をDBA名からN社アメリカ名に変更しました
さらに、CA/IAで、外線電話を受けるときの言葉も、DBA名からN社アメリカ現法名に変えました
1Company 2 Brandsポリシーの表明
それぞれのDBAが有していた2つのブランドはまさにプライスレスな価値がありました 診断薬メーカーとしてのN社のことは誰も知らなくても、それぞれのDBA名は診断薬業界の人間であれば世界中の誰もが知っている名前でした
言い換えれば、この業界に新しく入ろうとする会社には垂涎のグローバルブランドであり、喉から手が出るくらいほしいものでした
そんな大事なブランド名を捨てるよりは残して顧客の混乱を防ぐことが重要です しかし、マネージメントは統合しないといけない
そこで、1Company 2 Brandsポリシーを表明しました それぞれのプライスレスなブランド名は残しながら、会社は一つになるという意味です ブランドを残すことになりCA/IAの現地人はとても安堵したと思います
自分たちが血潮にかけて育てたブランドですから、彼らにとってもプライスレスな価値がありました
目標管理による評価制度導入
CAとIAでは評価制度がバラバラというより、評価制度自体が存在しませんでした CAのDBA長はCAのManagerの方がIAのManagerより優秀だと根拠のない発言をするし、IAからはCAの昇進は属人的すぎるというコメントがあり、互いに互いを批判しあうことが絶えませんでした
人事の専門家と相談し、目標管理を導入し、これへの達成度を評価制度に連動させる仕組みを構築しました
後に、給与はJD(Job Description)によって決め、ボーナスのランクを目標管理の達成度によって決めると変更しましたが、まずは、制度を導入し、ロケーション間での一つのスタンダードを作りました
全Managerとの月曜朝会開始
これまでDBA長と社長の間のコミュニケーションの良化は進みましたが、職能レベルでの全Managerとのコミュニケーションの良化を図りました
と言っても堅苦しいことではなく、先週やったこと、今週やることの社長への報告を全員で共有するというレベル 製造の報告は全員が聞くべきことであるし、営業報告もQAQC報告も経理財務報告も全て、全員で共有しようというポリシーで始めました
CAとIAのManagerは各7−8名いましたから各人が3分くらいで報告し、社長とのQ&Aを含めても4分以内 議論はしないというルールでした それでも月曜日の朝、1時間かかりました
最初は嫌がるかと思いましたが、この1時間は皆にとってとても新鮮だったようです 当方も笑顔を絶やさぬように心がけましたが、社長とダイレクトに交流できる場として、また皆の頑張りを知ることができる場として、参加することが楽しく、とても感謝しているというコメントを多く聞きました
PSI Meetingの開始
当初は、CA/IAのそれぞれとPSI Meetingを行いました 製販の実態が社長に上がってこない旧来のスキームを脱却し、P(生産)とS(販売)とI(在庫)がどのように月次で回っているのかを確認しました
両DBAとも見込み生産をしていましたが、販売見込みの精度が悪く、この両方の見える化を行うことで在庫見込みの精度を知ることができるようになりました
2016年には品番統合ができて工場管理ソフトがIA工場にも導入され、営業統合が進んだ後はPSI会議も一元化し、発表は工場ごとではなく、職能ごとに行うよう変えました
品番統合
CAとIAでは、全く異なる品番を有していましたが、販売統合を行うためには品番の統合を行い、両拠点での受発注や仕掛品を含めた在庫状況を一元管理する必要がありました
ここでもCAのDBA長がCAの品番が優れているのだからIAの品番をCA品番に変えればいいと主張するのを押し留め、全員の意見を聞きました
幸い、IAのQAQC長とIAのDBA長が品番統合のドラフトを作成してみるということになり、皆がそのプロジェクトに協力しながら待つことになりました 結果、新しいルールのもと、旧CAでもなく旧IAでもない、新品番ルールを作ることができました
既存の在庫の品番までを変えることは現実的に無理であるが、新しく生産するロットからは新品番で管理することを皆で合意し、取引先全てに連絡しました
丁寧に説明し、ほぼ全ての取引先が了承していただき、新品番による受発注が行われるようになりました
ERPソフトの統合
ERPの統合管理ソフトは、CA工場には導入されていましたが、IA工場はマニュアルで対応していました
請求書をワードで作るため、売上を上げて出荷をしても在庫数は減らないという前近代的なマニュアル管理は、工場管理の上で、致命的でした
IAとしては現状の不具合を理解し、ERPの統合ソフトを導入してもいいが、CAのものにはしたくないという意図がありました
一つは、CAが使用しているERPは統合ソフトとは名ばかりでとても使いにくいソフトであったことと、変えるのであれば、品番同様、新しいものに挑戦するのがフェアだという意見でした
おそらく、CAのシステムを自分たちが導入するというのは、あたかもIAがCAに買収されたような心理的な抵抗が大きかったのであろうと想像します
ともあれ、営業統合を進めるには、工場の受発注のシステムを早期に統合する必要がありました 機能統合された営業がIAの製品を売ることができるようにオンラインで繋げることが必要でした
そのためには、全くの新ソフトを入れる大改造で混乱が起き、ビジネスができなくなるリスクは避けねばなりませんでした
したがって、今後ソフトの変更や入れ替えを行うが、まずはCAのシステムで全社を統合し、当面のPSIを回すことを要請しました
営業統合
2011年にアメリカに赴任して5年 大変な準備期間を経て、2016年にやっとCAとIAの営業統合が実現しました
営業統合の前には、DBA長から、それぞれが同じ顧客への販売があるので、これまでの販売実績に比べ、CA1+IA1=2以下にしかならないがそれでいいのか、それは改悪ではないのかというネガティブコメントがありました
では実際にどれくらいのマイナスが起きるのか数字で確認しようと提案し、これまで、特にCAは、取引先名や取引先別の販売実績を隠す傾向にありましたが、情報を漏洩させないということを約束し、全てを開示してもらいました
その結果、確かにCAとIAは同一顧客に販売をしていましたが、同一顧客に同一種類の製品を販売しているのは、日本のN社向けのみであったことが判明しました つまり、CA1+IA1=2となっていることを、数字で確認することができました
それどころか、同一顧客に売っているため、顧客からCAとIAの仲の悪さを逆手に取られあたかも両方から同じ種類の製品を買っているように錯覚させ、両方を競わせて値引きを引き出していたことが判りました
これは誠に由々しき事態で、このようなロスを撲滅するためにも、営業統合による顧客の一元管理が必要なのだと皆を説諭しました
PPR Meeting
これらの統合活動は、さまざまなプロジェクトを編成し、基本的にCAメンバー+IAメンバーで進めてもらいました そしてそのプロジェクトの進捗状況を毎月のPPR(Project Progress Report) Meetingで発表してもらいました
プロジェクトは、CI統合プロジェクト、展示会ブース統合プロジェクト、品番統合プロジェクト、目標管理導入プロジェクト、新ERPソフト導入プロジェクト、営業統合プロジェクト、品質管理統合プロジェクト、生産性向上プロジェクト、抗原開発統合プロジェクト、Iowa州立大とのコラボプロジェクト、カリフォルニア新ビル建設プロジェクト等、多岐にわたりました
それぞれにプロジェクト長と副プロジェクト長を設定し二人が必要と考えるメンバーを入れて、CAとIAのメンバーが共同でゴールを達成することを図りました
PPR Meetingはプロジェクトの成就にも大きく貢献しましたが、それ以上に相互DBAの信頼度向上に繋がったことが大きな収穫であったと思います
他のプロジェクトの進捗状況を聞くことは、全てのManagerの意識を向上させました また、ゴールを共有することで、プロジェクトメンバー間の直接の対話が実現しました
それまでDBA長経由で聞いていた先方の状況や考え方が、各人のコミュニケーションによってより理解されるようになり、笑顔の絶えない議論が醸成され、相手を尊重し慮るチームワークが形成されました
あとがき
メーカーにとって品番統合を行うというのは、例えればソニーとパナソニックの製品品番、部品品番の全てを統合するような難易度です それぞれに意味があって品番が決められていますし、品番には工程管理やものづくりの考え方的な部分も濃く反映されていますから、本当に大変でした
しかし、現地人主導でこういう難易度のテーマを達成すると、皆がDBAの機能統合は行けるのではないかという感触を持ちました
実際に営業統合が実現すれば、大変大きな世界シェアを持つことができるようになります 動物由来の抗血清生産という小さな業界ですが、免疫系診断薬ビジネスのSCM的には、原料ビジネスのマジョリティを持つ我々が、業界のアウトプット量を決めることになります
社内的には「世界一の抗血清製造販売会社になる」を合言葉にCAとIAのDBAの機能統合を進めました
統合活動の推進中も、既得権益を見直されることで、守旧派による抵抗勢力的なアクションがありましたが、PPR MeetingやMonday Morning Meeting等で皆を鼓舞し続け、多くの分野でのCA/IAの機能統合を進めました

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