米国現地法人に赴任してみると、長年の放置状態と経営のスキルなしに送られていた社長が現地人に無視されている状態に驚きました ガバナンスの改善が急務であると整備を始めたところ、現地人には、荒療治に映ったようで、米国法人の人事部よりコーチング研修受講を進言されました
当時は米国人事部長よりマネージメント力強化のためと言われましたが、厳しすぎる私の振る舞いを直すため、現地人トップと現地人事部が相談して、受講を勧めたのだと推察します
ガバナンスの乱れと対応
結果報告業務
当時、米国現地法人のManager会議に出席していると、日本人社長は座っているだけで、全ては現地人で決められており、各Managerの給与は現地人トップが決め、現地人トップの給与は自分で決めているという無法状態でした
子会社稟議規定も職務権限規定もなく、親会社からの監督は現地の日系会計会社に丸投げのFinancial Reportが全てでした
米国現地法人社長は、現地の損益計算書の勘定科目を親会社の勘定科目に変換して毎月報告するのが仕事でした 実際、英語による円滑なコミュニケーションを行うことが困難で、GlobalなManagementスキルを持たないで現地に赴任してできる仕事は、このような経理主体の「結果報告業務」でした
ガバナンス強化の必要性
舐められているだけならソフトな管理体制を敷きゆっくりと改善すれば良いのですが、「親会社はなくていい」とか「親会社が何をしたいかわからないから自分たちで勝手にやらせてもらおう」とか言われると黙っているわけにいかなくなりました
フツーのガバナンスとして、親会社からの要求として子会社稟議規定の導入を要請し、社長権限を大幅に上げた職務権限規定を導入しました また、ISO責任者を現地人のDirector of Operationsから、経営者である私に変えさせました
現地人トップからは「能書はわかったがあなたにアメリカでのISO責任者ができるのですか?」と言われたので、「できるので、本来あるべき姿である経営者に代わりなさい」と毅然と答えました
また、現地のManagerの評価や給与・賞与の決定も現地人トップであるDirector of Operationsから社長に変えるよう、職務権限規定に明文化してもらいました
コーチング研修の依頼
きっかけ
ガバナンス強化を進めて3年ほどが経った時、米国人事部に呼ばれ、私の管理スタイルに不満が出ているので、コーチング研修を受けてもらいたいと言われました
それを収めるのが人事部の仕事だろうと思いましたが、言われてみれば、かなり厳しく接しており、Key人材に逃げられても困ると思いましたので、渋々OKしました
ヒアリングの結果
最初は、関係者へのヒアリングが行われました 360度評価から始まりましたが、ヒアリングの結果をソースをマスキングしながら教えてもらい、愕然となりました
コーチング研修をお願いしたコンサルからは、「自分は長くこの研修を行なっているが、このようなヒアリング結果になったのは初めてでした」と言われました 彼が言うには、ほぼ全員のManagerから同じことを言われましたとのことでした
それは、「社長は私に一番厳しい」というコメントであったとのこと 多くの日系企業へのヒアリングでは、会社の方針がわからないとか、社長の指示がわからないとかいうコメントがあるし、ある意味、日本人社長を蔑ろにしたようなコメントも少なくないが、全員に「社長は私に一番厳しい」と言われたのは、この会社が初めてですとのことでした
気づき
360度評価では、もっと種々のインプットがありました 気に入らない発言は無視するとか 会議で興味のない発言になると社長は携帯をいじり始めるとか、よく見てるなあと思いました
しかし、やはり、気になったのは、「社長は私に一番厳しい」とほぼ全員が言ったとのフィードバックでした ガバナンスが滅茶苦茶だから全員に厳しく接してきたが、これでは良い会社とは言わないなと思いました
また、コンサルからは、「皆が社長を無視してるということでしたが、皆さんは社長の意見をとても尊重していました」とのフィードバックがありました また、「もっと、優しくされてはどうですか」という助言ももらいました
ただ、対立するA拠点とB拠点をうまくやるにはどうしたら良いだろうかという私の質問には、彼は答えられませんでした コンサルは人材活用のコーチングであり、制度設計や経営には素人でした
自己変革
いきなり優しくなっても気持ち悪いだろうと思いながら、以下のことを心がけてみました
・まずは、相手の話をよく聞く
・話を遮らない
・笑う
・意識して感謝を口にする
・2拠点を結んで月曜日の朝会を始める(全Managerから計1時間の報告のみで議論はしない)
日本人の55歳すぎのおっさんには難しいチャレンジでしたが、これを始めて3ヶ月くらいしたら、「社長が変わった」と言われ始めました
以後は、現地人が主体的にテーマごとのプロジェクト運営の提案と実行を行い、経営に報告をしてもらうスタイルに変更しました そして、PDCAを回し、その成果とプロセスを評価に反映させるように目標管理による評価と同期を取るように変えました
コーチング研修
効果の有無を決める大きなポイントは、気づきを持てるかであると思います そして、その気づきを自分ごととして考えることができるかと思います
しかし、立場的に、また心情的には、そこに踏み切ることは簡単ではありませんでした
アメリカ現法がこんな状態だと知らされないで採用され赴任した自分こそが被害者なのになんでコーチングなど受けさせられるのか?!とか、Keyマンを抵抗勢力に誘導している現地人トップをクビにしたいが日本にその危機意識が無さすぎる!とか、グローバル戦略を打ち出していない日本こそが変わるべきではないのか!等々です
ただ、そういうことを言ってても何も変わらないので、先ずは、自分から「変わること」に挑戦してみようと考えました 現地の社長が変われば日米のそれぞれが変わるかもしれないと考えましたが、アメリカサイドは大きく変わりました ただ、日本サイドは、なかなか難しかったですw
あとがき
アメリカでのコーチング研修受講は、私にとっては、どちらかというと、黒歴史であると思います 実際、直接的な言い方で容赦なくやられますし、ある意味、会社の中で晒し者状態になっていましたから しかし、こういう経験をして、へこたれないで変わる姿を見せたら彼らも変わるのではないかと考えました
と言うほど立派なことを思ったわけではありませんが、まあせっかくだからやってみようと考えました
コーチング研修は安くありません しかし、自分を成長させてみたいと考える人には有用であると思います!
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