ファッションコーディネーター

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ファッションコーディネーターの西山栄子先生は、作家の伊集院静先生の実姉です 最近の著書に「今までの服が似合わないと思ったら…… 50代からのおしゃれバイブル」があります

西山栄子先生の講演

たしか、研究開発員向けの講演だったと思います 西山先生に依頼し、前職の研究所ホールにて講演会が実施されました 1987年か1988年ごろであったと記憶します

タンスには一生分の服が既にあるのに、なぜまだ買おうとするのか?

西山先生が講演で最初に言われたのは、この質問でした 日本人は既に一生分の洋服を持っているのに、なぜ、まだ買おうとするのか? 

私は、講演会を録画で見たのですが(持っている洋服が流行遅れになってしまうから、新しいものを求めて買うのではないかな)と思いました

しかし、先生が言われたのは、「洋服には流行があるから買い替えの欲求が起きます それもあるが、特に女性は、自分の演出の仕方への欲求が洋服を買わせるのです つまり、(成長した)私は昨日の私とは違うということを表現したいとき、昨日着ていた服ではダメなのです だから新しい洋服を買うのです」ということでした

なるほどーと思いました

ファッションの国際化は起きていない

もう一つ言われたのは、ファッションの国際化は起きなかったということでした 欧州の有名ブランドがパリコレでやっているような服を日本人の多くが着るようになるのか?と訝しく思っていたがやはり着なかったと説明されました 

一方、竹の子族が来ているような原宿系の服や、聖子ちゃんが来ている妖精のような服を海外の若い女性も着るようになるはずはなく、やはり日本のファッションが国際的なフォーマットになることは起きなかったと言われました

「世界は急速に縮まっているし、VHSビデオのような日本発の世界統一フォーマットができた けれどもファッションは、国際化という流れよりも地域性が残るという流れの方が強いみたいだ それは、その国や地域が持っている宗教や習慣や考え方みたいなものに根付いている部分が大きいのだと思う」というようなことを仰ったと思います

工業デザインの国際化は起きたのか?

あれから35年経ちます 工業デザインやファッションの流れはどう変わったのでしょう

テレビのデザイン

私は長くテレビ(受像機)のビジネスに携わりました アナログの時は、地域別のデザインが主流であったと思います

アメリカは壁に設えたキャビネットにテレビを入れるご家庭が多かったので、スピーカー部分が画面の下部にあるデザインが主流でした 一方、欧州は、スピーカー部は画面の左右にありステレオ音声の再生を強調する傾向にありました

日本では、4:3の画面をフルフラットにしてスタイリッシュにしたブラウン管が開発され、その後、画角を16:9に変えたフルフラット受像機が発売されました

車のデザイン

車については、地域で金型を変えて外観を変えるというのはコストがかさみ過ぎて難しい注文であると思います したがって、シャーシを統合して最重要地域に合わせたデザインを世界中で販売するしかないと思いますが、やはり無理は生じます

アメリカで売っているような巨大なSUVは日本では取り扱いに難がありあまり売れませんし、一方で、日本の軽自動車やリッターカーはアメリカでの大きな市場性があるとは思えません

欧州車は独自のポジションを持っていますから、ブランドの独自性を謳うことが可能であると思います しかしメルセデスのAクラスなどは、昔のメルセデスでは考えられないサイズ&エンジン位置(FF)ですから、車の世界でもグローバルマーケットへのアプローチは、かなり起きてきたのだと思います

アナログは地域性重視、デジタルはグローバルデザイン方向?

テレビは?

テレビに関しては、ブラウン管のフラット化の後、全てデジタルに移行してしまいました それに伴い、地域性のあるデザインはなくなり、世界中で薄型フラットの共通デザインのテレビを売っています 

アナログ受像機時代にあったブランド毎の画質差はほとんど無くなりました 性能や機能の違いによる付加価値の訴求ができにくくなっています 

車は?

車はこれから変わるのだと思います 電気自動車が主力となれば、デザインが全く変わる可能性があります ラジエターは必要ありませんし、エンジンルームも要りません 作り方も巨大な製造ラインによる生産ではなく、もっとセル生産的なものづくりに変わる可能性があります

ボディも鉄板である必要はなくなるのかもしれません テレビが真空管というブラウン管から液晶や有機ELに表示デバイスが変わったことに伴い大きな産業の変化を起こしたように、自動車業界も変わるのであろうと思います

デジタル(電気自動車)になると、大衆車と高級車の性能差や機能差がなくなり、「高級であること」の訴求を行うことが難しくなると思われます 自動車の家電化が起きるのではないでしょうか

ファッションは?

世の中がどんなに変わっても、人間はアナログのままです したがって、ファッションも地域性が残り全てがグローバルに統合されることはないと思われます しかし、ユニクロに代表されるファストファッションの業界は、シンプルなものを求めやすい価格で提供していますから、世界中の人に支持されています

このように、マスの部分では、グローバル化がさらに進むと思われます ファッション関連のYouTubeを見ると、パンツや下に着るものはファストファッションでいいから、上着で個性を出すのがCPに優れるやり方だみたいなことが言われています

ボーダーレスな水平分業によるファッションのグローバル化は進展し、既に人々の選択肢として根付いています

トレンドや技術の変遷

ブロードバンド普及のBefore/After

コミュニケーションもインターネットのブロードバンド化とともにマスから個レベルに移りました 2000年当時、先輩にどんなカムコーダーが売れると思うか?と聞かれたので、「アメリカでやってる運動会やハロウィーンパーティの様子を自分のカメラで撮りながら、そのまま動画を日本に送れて、孫が写っているプライベート動画を日本の両親が見ることができたら、飛ぶように売れると思います」と答えました

これだから素人は困るんだ そんなことできるわけないだろと言われましたが、あれから20年経ち、プライベート動画はタダで送れるし、それも両親だけではなく、世界中の友人に同報で送ることができます 信号のデジタル化と世界中に張り巡らされている光ファイバーの恩恵です

そして、インフラのデジタル化が新しいビジネスモデルを作っています

価格破壊、流通再編の波

時計、音楽再生装置、カメラ等、多くの消費財業界ではデジタル化とともに価格破壊が起きています また、購入方法もオンライン化が進み、流通再編の波が起きています ファッションの世界でもファストファッションが世界を席巻しています

これからのトレンドは?

二極文化のトレンド

このようなデジタル化が進む中で、これからは、二極分化のトレンドが起きるのかもしれないと思います

大量消費を支えるボーダーレスな水平分業のスキームがさらに進み、一方で、地球環境の保護に配慮をしながら、個性を際立たせたスローライフをサポートする仕組みが強化されるのではないかと思います 

特にシニア層を中心に、そんなに急がない人生、 人に合わせなくてもいい生き方、目的のはっきりしない旅行等、物質的な豊かさではなく精神面の充実を求めるようになると思います 

そして、そこに新たなビジネスモデルが開発されるのであろうと思います 大量生産、大量消費を前提としたスキームはさらにダイナミックに変化していくと思いますが、一方で、自分らしい生き方をサポートするビジネスモデルが開発されていくと思われます

世界環境の変化

我々を取り巻く環境は繰り返される自然災害や安全保障の課題等さらなる厳しさが予見されます そして、生活スタイルのトレンドも影響を受けていくと思われます 

35年前には東日本大震災や熊本大地震は予知できませんでしたし、NYや各地で起きた世界同時テロのような世界を震撼させる事件は予想されていませんでした ロシアがウクライナに侵攻するなどとは、夢想だにしなかったことです

また、サッカーリーグがプロ化し多くの日本選手が海外で活躍しています 野球界では大谷選手のようなスーパースターが大リーグを盛り上げています

いろんなキーワードがあると思われます グローバル化、少子化、安全保障問題、経済のさらなるブロック化、米中問題、アジアの時代、北朝鮮問題、デジタルインフラの更なる拡張等々、様々な要素がミックスされ新たなトレンドを形成していくものと思われます

あとがき

35年前の西山先生の講演の答え合わせをするつもりはありませんが、とても記憶に残る内容だったので振り返ってみました

産業革命以降、量を求めてマスを意識したドメスティックなビジネスが発展してきましたが、デジタルブロードバンドが普及し、個を重視したグローバルなビジネスに変わってきました

タンスが服でいっぱいになったら、一部を売りに出したり寄付したりするようなビジネスがフツーになっています 家も家族構成によって住み替える時代 デジタルインフラの整備が進み、楽しみ方が変わり、ビジネスモデルが変化しています

もう少し長生きして、世の中がどんなふうに変わっていくのかを楽しみたいと思います

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