大学受験 浦島太郎

マイブーム

今年4月に教育関連への転職を行い、数十年ぶりに大学受験の情報に触れる機会を持ちました 

うちの子供は二人とも義務教育を海外で過ごし、帰国後は大学の付属高校に入ったので大学受験がありませんでした それもあり自分の大学受験の理解は昭和のレベルで止まっているのですが、諸々が驚くレベルにあり、少なからず戸惑っています

まさに浦島太郎状態であり、「今ごろ?!」と呆れられるかもしれませんが、驚いた内容をレポートしてみます

とにかく大学数が多い

ライバル校の高校別に大学受験の合格者をリスト化して偏差値別に並べ替えるという資料を作る過程で、合格大学数が300を超えてしまい、本当に疲れました なかには聞いたことがないような大学名もあって、偏差値を探すのに手間取り資料の作成にかなりの時間がかかりました

加えて学部数もかなり増えていますので、大学別学部別の資料を作ろうとすると、さらに時間がかかるものと思われます

18歳人口推移と大学進学率

これまでの推移

18歳人口のピークは1992年の205万人、但し当時の大学進学率は26%ほどで進学者数は54万人でした 18歳人口はその後減り続け2023年には110万人とピーク時の54%になるも、一方で大学進学率は伸び続け57%となり、進学者数は62.4万人と60万人強レベルで推移しています。

大学進学率の伸びは特に女子が大きく、1992年は15%だったものが、2021年では52%と3倍以上に上昇しています。一方、男子の進学率は35%から58%の伸びを示し、2023年の大学進学率の男女計では、1992年の26%から57%に倍増しています

これからの見込み

但し、今後も18歳人口は減り続け、リクルート進学総研によれば、2035年の18歳人口は約97万人となり、2023年比で13万人減少(12%減)します

大学の淘汰が起きる可能性があります 進学率が伸びず18歳の人口減がそのまま進学者減になると大変厳しい事態が待っていると思われます 

生き残りをかけた戦い

もし12%減が起きるとしたら、それは全ての大学の入学者数が12%減少するわけではありません 上位大学は合格レンジを下げて入学者を確保しようとしますし、その下の大学も同様に合格レンジを広げて募集人数を確保しようとします その結果、一番下位にある大学や、これといって特徴のない大学は、受験者がいなくなることになろうと思います

今後は大学の合従連衡が起きるでしょうし、高校も歴史ある名を捨て、大学の付属校化に身を転じ生き残りをかけようとするところが出てくるのではと私見しています

女子大の凋落が著しい

短大の役割終了に伴う閉校

2010年以降、短大が閉校となるなかで女子大が受け皿になると見られていた部分がありましたが、実際には、女子大には必要となる学問を学ぶ学部がなく、多くの女子受験生は共学校に流れたという流れがあるようです。

女子大凋落の理由

90年代は津田塾の偏差値は早慶に準ずるポジションにありました しかし、驚いたことに最近はMARCHより下位にあります 昨今は、両方合格した場合、東洋大に行く学生も出ているとのレポートがあります

女性の社会進出が珍しいことではなくなり、夫婦の共働きが普通のスキームに変化してきています そういう環境の変化が起こっていますが、女性が総合職で男性に伍して実力勝負をしようとしたとき、女子大に社会科学系の学部がなく、身に着けた知識が企業での業務にマッチしていない実態があります

このことは、女子大にとって盲点であったかもしれません 夫を支える良妻賢母を育成するという意味では、家政学部やせいぜい人文系学部が望ましく、小賢しい社会科学系の学部や理系の学部などを持つ必要はなかったのかもしれません

新しいチャレンジ

女子大だけではなく、学校全般に言える部分ですが、これまでは「顧客が自分(の学校)を選んでくれる理由」をきちんと提示しなくても多くの受験生がいましたので選んでもらえました しかしこれからの時代は、それが許されなくなると思われます 

少子化により売り手市場に変わりますから、高校生や保護者の皆さんが自分を選ぶべき理由をきちんと言えることが重要になっていくと思われます

一般入試での入学は半分、 現役と浪人

一般入試での入学は半分

特に私立大学で顕著ですが、一般入試での受験は半分になっています 学校推薦型選抜と統合型選抜が増えており、受験生はこれらのオプションをどう選ぶかを見極めねばなりません

この傾向は、国立大学にも及んでおり、2016年からは東京大学も推薦入試を開始しています

現役受験、浪人受験

大学進学生中の浪人生比率は、1985年には40%ありましたが、2000年には20%になり、そして2014年には6%にまで減っています

浪人を好まない女子大生が増えていること、教育費全体が重く家計を圧迫し浪人をさせられない経済事情をもつ家庭が増えたこと等がこの傾向の要因であるようです

また、受験生も、浪人すれば一つ上のランクに行ける(かもしれない)のに、わざわざそういうことをしようとはしない淡白な振る舞いに変わってきていることも要因であるように思われます

優越感とコンプレックスは今も健在

大学図鑑の確認

冒頭の大学図鑑のような本を見ると、相変わらず、私大Aグループとか私大Bグループとかでグルーピングしてあり、この日本的な大学の序列による狭い学歴区分は多少のアップデートはありますが、10年一日の如く続いていることを確認しました

世界の中の日本、世界の中の大学

世界的に見れば、日本の大学のどこに受かろうがあまり関係ないレベルの話ですから、それに一喜一憂している我々というのは、いつまでもグローバルな視野を持てない極東の島国なのかと自虐的に思ってしまいますが、グローバル競争に晒されることのない学校や教育機関は、グローバルな視座での考察の少ない、かなり内向きな業界であると思います

そういう内向きな超国内指向の学歴ヒエラルキーの中で、優劣が決められていて、優越感を持ったりコンプレックスに悩んだりする あの人は旧帝大卒だから偉いとか、あの人は3流私大だから出世はしないだろうとか学歴でレッテルを貼られる日本という社会

少し遅すぎ感がありますが、微力ながら少しずつでも変えていくことに貢献できたらと思います

あとがき

教育機関に働き始めて、英国やアメリカに長く暮らして帰ってきた自分の浦島太郎ぶりを思い知らされた部分があります 

現在の企業の事業運営はグローバル連結による評価を受けるためかなり高いグローバル視座を求められるように変化しており、ある納得感を持って対応しておりましたが、前職を退任し教育という社会的なインフラに携わる仕事を始めると、40年前と変わらないドメスティックな序列があることに大きく驚きました

しかしこれが現実であれば、一旦受け入れて、その上で我々にできる改善がないかを探そうと考えます おそらく大きなことはできないと思料しますが、次代を担う若者にどのような貢献ができるかを自分なりに考えてみたいと思います

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